2020年7月末にCapture One Pro の新スタイル「Beyond Film」が発売されました。
スタイルって何?という方は「Capture One のStylesとスタイルとプリセットの違いは何?おすすめはどれ?」をご覧ください。
今回新しく登場した「Beyond Film」は直訳すると「フィルムを超えて」とか「フィルムの先へ」という意味になるのですが、その名の通りフィルムを模したスタイルとなります。
それではこのBeyond Filmを実際にRAWファイルに適用しながらレビューをしていきたいと思います。
Beyond Film はこれまでのフィルム風スタイルとどう違う?
Capture One にはこれまでもフィルム風スタイルが発売されていましたが、今回のBeyond Filmとはどう違うのでしょうか?
Beyond Filmはこれまでのフィルム風スタイルに比べ、かなり控えめに仕上がっています。
そう、まるで本物のフィルムのように。
どういうことかと言いますと、Adobe LightroomやInstagramを始め”フィルム風”の加工が当たり前になって久しいですが、これらの派手な加工はフィルムをさらに特殊な現像(クロスプロセス現像など)をした時に得られる効果に似せたものが多いのです。
本来、本物のフィルムを現像してもそれほど派手に変化した色調で出てくるわけじゃありません。
今回のBeyond Filmはそういった、本物のフィルムをストレート現像したような風合いに仕上げてくれる、どんなシーンでも使える汎用性の高いスタイルなんです。
従来のフィルム風スタイルはハマるときは良いのですが、結構個性が強いこともあり使い所を選ぶ場面がありました。
反対にBeyond Filmは日常使いできるスタイルだと言うことですね。
Beyond Filmのスタイル一覧
Beyond Filmのスタイルパックには計20個のスタイルが含まれています。
まず、今回メインとなるフィルム風スタイルの部分です。
Film…F200(×3)、F400(×3)、K100(×3)、K200(×3)
※(×3)というのは同じ色調で、コントラストを変えた3パターンということです。
恐らくFは富士フイルム、KはKodakをイメージした色調だということでしょう。
そして、なにげに便利だと思うのが、ノイズの部分が別スタイルになっていることです。
Grain…Harsh(×2)、Silver(×2)、Soft(×2)、Tabular(×2)
※(×2)というのは、同じノイズの質で、ノイズの強度を変えた2パターンということです。
Harsh、Tabularは大粒のノイズで写真を100倍表示にしなくてもザラザラ感がわかります。
一方、SilverとSoftは上品なノイズといったイメージで写真を100%表示にしないとわかりにくいです。
Beyond Film の作例
恐らくFが富士フイルム、KがKodakだと言うことは、Fがブルー系、Kがイエロー系に傾くのが予想されます。
というのも、昔聞いた話なのですが、黄色人種である日本人は美白に憧れるので、肌を美しく見せるために彩度低めの青色のフィルムを好み、逆に白人は血色の良い健康的な肌に見えるように彩度高めの黄色のフィルムを好んだそうです。
前者が富士フイルム、後者がKodakのフィルムの味ですね。
よく思い出してみると、邦画って青白く、ハリウッド映画などは黄みがかっているイメージがありますよね。
Beyond Film F200の作例
いきなりですが、本家富士フイルムのカメラX100VのフィルムシミュレーションProviaが効いているRAWファイルに今回一番しっくり来る「Beyon Film F200-I」を適用してみました。
ちなみに各スタイルにI、II、IIIとあるのですが、Iはコントラスト弱め、IIIに行くほどコントラストが強くなります。


富士フイルムのフィルムシミュレーションのProviaは彩度が高く、個人的にはあまり好きでは無いのですが、ポジフィルムのProviaと違ってBeyond FilmのF200-Iはネガフィルムのような、軽い空気感が流れる落ち着いた色調となっていますね。
以下、全てのパターンのスタイルを割り当てた一覧を用意しましたので、クリックして拡大して色調の違いをご覧ください。

もう一つ作例を用意しました。


Beyond Film F200-IIがものすごくしっくり来ています。
オリジナルではいまいち再現されていない、樹の葉、草の葉、青銅の錆、垣根の苔など、緑にの中にも色彩豊かであるというのがよく出ていると思います。
写真から湿度を感じますね。

Beyond Film F400の作例
F400の印象は、F200より全体的に彩度を下げ、さらに緑の色相をずらしている印象です。
言うなれば、F200が日常使いに対し、F400はノスタルジーを演出する様な感じでしょうか。


オリジナルは元よりF200でも緑・黄色の彩度が高く神聖な空気感が出にくいこの写真は、Beyond Film F400-IIが一番しっくり来ました。
緑の彩度がかなり下がっているので背景が主張せず、金の細工が黄色にならずちゃんと金色に再現されています。

次に淡いノスタルジーに浸れそうな猫の写真。


オリジナルの背景は白飛びしていますが、スタイルを当てることで背景にほんのり色が付きポストカードのようになりました。
スタイルを適用した一覧を見えもらえばわかると思うのですが、各スタイルのベースの色がわかりやすいと思います。

Beyond Film K100の作例
Beyond Film K100は今回のスタイルの中では変化が一番大きく、特に青色の変化が顕著に出ます。
Kodakだな~という青色で、個人的にはかなり好みです。
効果がわかりやすいようにハワイの空を選んでみました。


オリジナルの写真はソニーで撮影したもので、いかにもマゼンタ高めのソニーブルーという感じですね。
一方、K100-Iを適用した方は、青色が黄色み掛かりポストカードのようなクラシックな雰囲気が出てると思います。

次は濃い目の空に適用してみましょう。
写真は東ヨーロッパ、ルーマニアの古都です。
壁は黄色、空の青色が対照的ですね。


もうこの発色はポジフィルムそのもの。
しかもコダックブルーの再来かと言えるほどの青色だと思います。

Beyond Film K200の作例
K200は派手目なK100をシックに抑えたかのような発色をします。
K100では彩度が強すぎて、写真に重厚感が無くなってしまうような時は、K200が良いでしょう。
サンプルにタイのアユタヤ遺跡のレンガを見てみましょう。


砂埃が多いエリアですので写真も全体的に霞がかっています。
Beyond Film K200-Iを適用することで、黒が締り霞がかっている感じが解消されたのと同時にレンガの重厚感も上がり、葉の緑のデジタル臭さも消えていると思います。

次にK200の青色、K100の脚色された青色よりは大人しめで癖が少なく使いやすい印象です。


夕焼けの少し黄色がかってきた空に適用すると何とも言えない、良い感じの青のグラデーションが生まれます。

Capture One Pro の新しいスタイルBeyond Filmまとめ
作例をご覧いただくとわかるように、Fは富士フイルム風に彩度抑えめで青みを強く、KはKodak風に彩度強めで黄色みを強くしている傾向にあるようです。
スタイルを適用した一覧を見てみますと、あまり派手に色調補正は行わず、オリジナル+αの良さを引き出してくれるような、常用できるスタイルだと感じました。